2006.04.08

通報制度

 インターネット上の違法情報・有害情報に関する通報窓口「ホットラインセンター」の設立準備会合が開かれました。違法情報については現行法でも十分に対処可能だと思いますが、有害情報における「有害」認定の曖昧さなどが以前から疑問に思っていた私は、パブリックコメントを提出しました。

 [意見]

 1)子ども参加と委員の構成等について

 今回の対策では、子ども当事者もインターネットのユーザーであり、大きな利害関係者です。児童の権利に関する条約(以下、子どもの権利条約)では、第12条に置いて、意見表明権が掲げられています。にもかかわらず、ホットライン設立準備会委員には、子ども当事者が含まれていない。

 ホットライン設立準備会委員には、情報論や犯罪論、テクニカルな担当者、法律上の専門家はおりますが、子どもの権利や心理学、教育学に関する専門家がおりません。委員には、子どもの権利や心理学、教育学の視点から、インターネット上の違法・有害情報の問題を考えるメンバーが必要だ。

 もし、それが可能ではない場合、こうした一般の意見を求めるパブリック・コメントとは別に、専門部会(たとえば、子ども当事者が意見を継続的に述べられる場や、専門家の提言が提出できる場)が必要だ。

 2)情報アクセス権の重要性

 こうした子どもの権利に関する事項を議論する場合、第17条のeにおける、有害情報からの保護も大切ではあるが、表現の自由を考慮し、かつ、多様な情報へのアクセス権に考慮せねばならず、有害情報からの保護のみが優越的に考えられてはいけない。

インターネット上の違法情報は、現行法に従えば、ホットラインにおいて通報制度を設ければよく、違法の判断が明らかな場合は効果的である。しかし、有害情報の場合、何が「有害」なのか、誰にとって「有害」なのかは明確ではない。

 「インターネット上の少年に有害なコンテンツ研究会」報告書でも、1)一般に有害と考えられるが、内容や受信者の属性、地域によって有害の捉え方が異なる、2)それ自体は有害ではないが、使い方によって有害となりえる、3)中立的な立場からコンテンツを提供しているが、受信者の属性や捉え方によって有害となりえるーとあり、「有害」を規定しにくい。

 「有害」の判断が下される場合、多くの都道府県での青少年育成条例でも、「有害」の根拠となる判断のプロセスは開示されることはない。ホットライン等において、「有害」と判断することがあるのなら、その根拠や議論の過程も開示すべき。

 そのため、有害での判断プロセスにおいて、表現者やサイト設置者、ユーザー等の当事者の反論の機会を設けるべき。


 [まとめ]
 インターネット上の違法・有害情報に関して、それに対処する取り組みに関して、日頃から対策を考えていることに敬意を表します。たしかに、なんらかの対応が迫られていることは、インターネットを通じた犯罪等の発生状況を考えれば、当然ではあるでしょう。しかしながら、取り締まり強化を中心とする方策には慎重とすべきであると考えます。


 [提案]

 違法情報に関しては、現行法の取り締まり体制を強化すればよいと思われる。しかし、有害情報に関しては、ユーザーの個別的な事情が大きいと思われる。そのため、公的機関が一律的、画一的に「有害情報」を規定すべきではない。

 むしろ、ユーザー自身が、何が「見たくない」のかを、また、ユーザーの保護者等が「見せたくない」のかを、考えられるよな、ユーザーへのリテラシー教育をする機会を拡大すべきだと考える。

 その際、単に、情報それ自体の善悪ではなく、情報がいかにつくられるか、その情報の信憑性、情報の活かし方を含めた情報教育を積極的にすべきではないか。

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2004.09.28

ネットの危険はどこに? 2

 東京都が設立した「ネット社会と子どもたち協議会」については、先日も「ニュース潜望鏡」で取り上げました。その協議会について、新聞報道ではわからない部分を取材しようと申し出たところ、都側から、意見交換をしようと提案があり、都庁内で意見交換をすることになりました。意見交換には10数人がきていました。

 もともとは竹花副知事が提案したようです。私は「佐世保小6同級生殺害事件」を受けたものなのか?、と考えていたのですが、どうやら、事件以前から構想はあったようです。そして、出会い系サイトでのリスクが念頭にあるようです。警察庁の発表でも、年々、「出会い系サイト関連事件」は増加しているからでしょうか。この協議会は、10月27日に緊急提言を出すようです。

 それにしても、会合に参加して、ますます、なにが規制の焦点なのかがわからなくなりました。参加しているメンバーも様々な職業、さまざまな年代、さまざまなNPO等です。見つめている「現実」もバラバラです。バラバラであることは悪い事ではありません。むしろ、多様性を持たせるためにはよいことでしょう。 

 しかし、多様性はあるが、現状認識がおそらく、警察庁のデータといったものくらいなのではないか、と。子どもたち(年代によっても違うと思うが)がどんなサイトを見て、どんなゲームを楽しんでいるのか。出会い系にアクセスすることがあれば、どのような経路でするのか。出会い系であったら、どんな関係になるのか(恋人、友達、一度きりのセックス等)は、想像で埋めるしかない現状です。

 せっかく集まった多様な集団なので、継続してほしいものですが、規制が「緊急」なために、実態とは乖離しているのではないか、と思えてなりません。


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2004.09.10

ネットの危険はどこに?

 東京都がインターネットから子どもを守るために、「ネット社会と子どもたち協議会」を作った。毎日新聞の報道でしかみていないが、どうやら、危険なサイトは「出会い系」や「自殺系」などらしい。

 たしかに、出会い系サイト関連事件は年々増加している。しかし、何をもって「関連事件」とするのかは、警察活動の結果の問題だ。たとえば、出会い系サイトで知り合った者同志のトラブルで殺人事件に及んだ場合は、関連事件だろう。しかし、知り合って数年が立っていた場合も同じように「関連事件」として扱うのだろうか。微妙なところだ。

 また、出会い系サイトで知り合って、淫行(未成年との、いわゆる「淫らな性行為」)の関係があった場合、都道府県の条例の差があり、厳密に「犯罪」と言いがたい(せいぜい、道徳違反、といったところか)。逆に、出会い系で知り合った者同志がネット恋愛をし、結婚するケースもある。結婚とまではいかないまでも、親友になるケースだってある。

 さらにいえば、なにが「出会い系」なのか、って問題もある。「出会い系サイト規制法」のときにも、「出会い系」の定義はあいまいだったが、インターネットはすべてが「出会い系」といっても過言ではない。

 「自殺系」に関しても一様ではない。たしかに、03年に流行した「ネット心中」の相手を募集するサイトはいまだに存在する。また自殺願望者たちが、どのようにすれば死ねるのかの情報交換をするサイトも少なくない。しかし、そうしたコミュニケーションが、実際に自殺の実行と関係あるのかは検証しようがない。背中を押すこともあるだろうが、逆に、抑止に働くといった効果もある。
 さらに、自殺系のなかには、そうした情報交換ではなく、相談によるコミュニケーションを中心としたものだってあるし、自身の自殺願望を吐き出すことで、現実とのバランスをとっていることだってある。自殺系=危険という図式は単純すぎはしないか。

 毎日新聞の記事中では、「親が使えなければ、子供とコミュニケーションが取れない」との意見があったという。おそらくは、この協議会の参加者は、出会い系や自殺系にアクセスした人は少ないだろうし、ちゃんと現実的に分析した人はいないのではないかと疑ってしまう。

 結局は、有害サイトの排除という方向に行くのかもしれない。こうした会ができると、いつも思うのだが、子どもをメンバーに入れないで、なぜ議論や方向性を見いだすことができるのか、ってことだ。子どもの方が大人よりも、ネットの現実を知っている場合は多い。子どもの中のヘビーユーザー層や初心者層など、アクセスの経験値によっても、対応が違うだろう。子どもを一般化したような対策はナンセンスではないか。


「ネット社会と子どもたち協議会」設立

 東京都は、NPOや学校、企業などと連携し、インターネットの危険から子供を守るとともに、大人と子供にとって豊かなネットワーク社会をつくることを目指す「ネット社会と子どもたち協議会」を設立した。7月に開かれた緊急フォーラムを受けて設立が決まり、8日、都庁で設立総会が行われた。

 渡辺陽子・運営委員長(NPOひさし総合教育研究所長)が「子供と一緒にインターネットを、人類の発展に貢献するような新しい力にしていきたい」とあいさつし、野間俊彦・東京都北区赤羽台西小学校教諭が特別講演した。野間教諭は「子供たちはすでにメール端末として携帯電話を日常的に使っている。持っていないと仲間に入れないといったことも起きているのではないか。現実の社会でやってはいけないことはネットの中でもやってはいけないと、親が教える必要がある」と訴えた。

 また、危険なサイトとして、出会い系や自殺掲示板、死体写真が掲載されたサイトなどが示され、竹花豊・副知事が「実際、子供たちはどのくらいアクセスしているのか」と問いかけると、会場に集まった教員やサイト運営者らから、「親は知らないが、子供にとっては日常になっている」「30万人の利用者がいるコミュニティサイトで、5割が小中学生。どんどん増えている状況だ」との声が相次いだ。

 また、「地域でインターネット安全教室を開いた経験があるが、教えたいというボランティアは集まっても、教わる側はなかなか集まらなかった。一般の人たちの関心が低いのではないか」「親が使えなければ、子供とコミュニケーションが取れない」−−など、親の関心が低い現状への意見が出た。

 協議会は緊急の課題として、子供の携帯電話に出会い系メールなどが送られるのを阻止するため、通信事業法の改正や東京都条例の制定を求める提言も検討する。今後、メーリングリストなどを通じて議論を続け、10月に開催予定の総会で「緊急提言」をまとめる。

毎日新聞 2004年9月10日 9時29分

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