東京都の緊急提言について
少年犯罪の多発、凶悪化、被害にあう少年の増加ーなどを理由に、東京都が「緊急提言〜子どもを犯罪に巻き込まないための方策」を発表した。作成したのは、「子どもを犯罪に巻き込まないための方策を提言する会」(座長・前田雅英東京都立大学教授)だ。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2003/10/20da3401.htm
こうした提言は、犯罪を予防するうえで必要な提言であるかのように思える。しかし内容を見てみると、お粗末であると言わざるを得ない。そればかりか、治安色が濃く、子どもの権利の視点はほとんどない。子どもの権利と治安は、表面的に対立することや場合によっては権利の制限がありえなくもない。しかし、原則的には、対立しないもの
であると思う。そればかりか、権利が制限されたり、人権侵害を受けた子どもが、治安を脅かす側面もあるだろう。そうしたことをふまえない提言は、一面的であると思われる。
問題と思われる箇所は、まず、「はじめに」にある。
「子どもはみな、健全に伸びる力、自律していく力をもっている」
とある。一見、子どもを信じている大人という印象を受けるのだが、この緊急提言は「治安」が前提である。犯罪をおかさないことが「健全」ということなのだろう。しかし、犯罪は時代に応じ、法律によって作られる面がある。たとえば、「出会い系サイト」への、援助交際の誘いの書き込みをしただけでも犯罪というのは、まさに、時代がつくり出した。なにが健全なのか。結局、社会の都合の枠組みの中で、大人の言いなりに育つ「良い子」に育つのが「健全」なのだろうか。もし、そうであるならば、このような視点で、「心の叫び」を聞く事ができるのだろうか。
さらに、「1、子どもを犯罪に巻き込まないために」では、「1ー(1) 子どもに対する非行・犯罪の被害防止教育の強化等」において、「(インターネットや携帯電話などの)新しいメディアは、現実社会と仮想社会の区別がつかなくなってしまう…」とある。そもそも、ここでいう仮想というは、バーチャルのことだろう。
学問的に間違っています。都立大の学者が座長を務めている割にはあさはかです。 バーチャルは、修士論文での、この言葉の概念は扱いましたが、まったくの仮想というよりは、現実とパラレルに存在するものです。この提言では、定義自体がおかしい。
さらに、区別が付かないと言っていますが、そもそも、区別が付かないという類いのものでしょうか。たとえば、電子メールは、それ自体が仮想なのか。携帯電話での会話は仮想なのでしょうか。そうした発想は、テレビが誕生したときの議論にも似ている。
万が一、区別が付くことが必要であったにしても、子ども時代は、物思いにふけり、仮想社会を楽しむことがよくあることです。それはメディアのせいではない。 こうしたことは、単に、インターネットや携帯電話というメディアそのものの問題ではない。漫画も、テレビも、映画も、すべて、物思いにふける材料になりえる。この提言では、まさにそうした行為を危険視していないだろうか。
新しいメディアの誕生は、現実と仮想の区別がなくなるといった問題ではなく、そのメディアを使ったコミュニケーションスキルの向上や、メディアリテラシー教育で補っていくべき問題であるように思う。


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