東京都の緊急提言について 2
前々回に引き続き、東京都の「緊急提言」について考えてみる。
「1ー(3)虐待を受けている子ども等への対応」では、「虐待に至らなくても、家族の機能の崩壊している家庭の子どもには居場所がな」い。そのため、「そのような虐待や家庭崩壊を社会が早期に発見し、社会全体で適切に対処・支援していく」必要性を訴えている。
この「緊急提言」は、以前にも述べたように、犯罪予防が前提となってる。つまり、虐待や家庭崩壊を早期に発見し、適切な対処をしていけば、非行にも走らないということを指摘している。提言の中で、虐待や家庭崩壊と非行の因果関係について、詳細なデータが示されているわけではない。また何をもって家庭崩壊とするのかは、非常に曖昧である。
たしかに、虐待や家庭崩壊があれば、非行に走るかもしれない、という指摘は、印象としてはあるだろう。また、非行の裏には、そうした虐待や家庭崩壊による心理的な不安はあるかもしれない。しかし、非行少年の生活歴をたどったときに、そうした家庭の状況はあるだろうが、虐待や家庭崩壊があれば、非行に走るという因果関係は、生活歴をたどっただけでは証明されない。
「家族さえきちんとしていれば」
という以前の、アダルトチルドレン・ブームでも指摘されていた「よき家族」を求める社会全体のムードが、むしろ、プレッシャーになっているのではないか、と私は考えている。「よき家族」を求めるが、実態としてはそうではない状況があったとき、社会的要請である「よき家族」に適応しようとさらなる心理的な圧力がかかる。
「よき家族たれ」。そうした発想自体が「よき家族」ではない人々に負い目を感じさせるのではないか、と私は考える。ただ、その「よき家族たれ」という発想を、100歩譲ったとして、提言でなされている行政的な対応は、これまでとほとんど変化はない。しかも、虐待というほどではない家庭崩壊の状況を、どのように、だれが判断するのか。仮に判断できた場合、ただちに生命の危機がなく、一時保護ほどまでの処置をとらない場合、どのようにケースワークできるのか。実際にはそうしたグレーゾーンは大いにかかわらず、現場感覚の対策は記述されることはない。
そして、結局は、対処療法というか、罰則強化に乗り出すしかないのか。深夜徘徊の防止の項目があるが、都では、深夜徘徊をした子どもの親に罰金を科す条例改正を検討中だ。このような罰則化で、少年非行が防止できるのか。ますますストレスが溜まっていくだけではないのか。家庭が安心できないから深夜徘徊している子どもにとっては、安心できない家庭に居ざるを得なくなる。本末転倒な対策ではないのか。ぐ犯少年の送致の拡大も提言してい
る。ぐ犯少年とは、罪をまだ犯したわけではなく、罪を犯しそうな少年であるが、そうした少年の送検を拡大することは、子どもを信用してないことを表明することにほかならない。そうした処置は、大人と子どもの信頼関係を壊すことになりかねないのではないか。


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